恨んでばっかりだなお前は

高校の時。部活の先輩達を尊敬していたし、憧れていた。でも彼らが引退する時に放った「お前との思い出は特にないわ」という言葉が尾をひいて、純粋な好意がねじ曲がってしまったまま私は高校を卒業した。

 

そこからさらに時は流れ、実に5年ぶりとなる再会を果たすことになる。飲みに誘われたのだ。

行かなくても良かったのに結局会うことを選んだのは、大人になりたかったからだし、長い間引きずった自分をいい加減楽にしてやりたかったからだ。

 

彼らと会ってすぐに「変わったな」「垢抜けたな」と褒めちぎられて、胸の奥の見えないところにしまい込んだ好意を引っ張りだされてしまった。散々引きずってきた遺恨も忘れてしまいそうになるくらいだったから、せっかく研いできた牙もまるで機能しなかった。

近況報告を済ませてから思い出話に花を咲かせる頃、酔いも回り思いの丈をぶちまけた。

そしてそれは、先輩に関係のあることばかりではなかった。

 

あの時あんなこと言うから、

一番一緒にバカやってたのに、

同期よりも俺が分かってた、

先生は何も分かってくれなかった、

俺はきちんと謝ったのに、

あんなの全然いい思い出じゃなかった

 

一通り聞いてくれた先輩はなだめてくれたんだけど、その時にボソッと「恨んでばっかりだなお前は」って言ったんだよ。それは面倒くさがるような、呆れるようなニュアンスなんかじゃなくて。寂しげで同情するような、ひどく血の通った言葉だった。俺は理解を得られて嬉しかった反面、何かを失ったような気がした。

でもそれは間違いで、これまで直視出来なかった弱っちぃ自分の輪郭を自覚しただけなんだと思う。そこに空っぽの自分がいて、卑しい自分の底を見られたような気がしているんだけど、気がしているだけなんだよ。ずっとそうなんだよ。

 

俺は悔しさと恥ずかしさを押し戻すために残りのレモンサワーを飲み干した。俺は俺のために、そんなことないって言い続けるけど、たぶんあの瞬間、酔いは覚めてたはずなんだ。